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境界性パーソナリティ障害って、どんな病気? 境界性パーソナリティ障害って、どんな病気?
解説:市ヶ谷ひもろぎクリニック
精神科渡部芳徳先生

境界性パーソナリティ障害(BPD)とは、どのような病気なのでしょうか?

イラスト イラスト 本来、人間には一人ひとりの個性があり、パーソナリティ自体は病気ではありません。社会的に問題を起こしたときに初めて「障害」となります。 例えば、アルコール依存症と大酒飲みでは、何が違うのでしょうか?お酒が原因で、会社に遅刻・欠勤するなど、社会生活に困難が生じればアルコール依存症になるのです。 BPDも同じで、「職場で頻繁にトラブルを起こす」「家族に暴力をふるう」など、自身で処理できなくなった場合に「パーソナリティ障害」となるのです。

パーソナリティ障害には、「自己愛性パーソナリティ障害」や「演技性パーソナリティ障害」など、いくつかの種類がありますが、 BPDはその中でも「感情や対人関係が不安定」「衝動をうまく抑えられない」という特徴があります。 そのため、周囲とうまくコミュニケーションがとれず、社会生活を送る上でたびたび困難が生じます。

境界性パーソナリティ障害(BPD)の患者さんはどれくらいいると言われていますか。
また、男女の差や発症しやすい年齢はありますか。

米国精神医学会が刊行する「DSM-5」(精神疾患の分類と診断の手引)には、発病率は1.6%とありますので、 決してめずらしい病気ではありません。また、患者さんは女性が76%とあります。実際に、当院のBPD患者さんも女性が多いです。 一般的に10代後半~20代前半の発症が多いとされていますが、最近では30~40代の患者さんが増え、年齢が少し上がってきているように思います。

境界性パーソナリティ障害(BPD)の特徴的な症状には、どのようなものがありますか?

イラスト イラスト まず、「理想化とこき下ろしとの両極端で揺れ動く激しい対人関係」が挙げられます。 例えば、恋人を理想化し、何でも自分の思い通りにしようとして、それが上手くいかないと一転して相手に攻撃的になり、 ひどいことを言ったりします。また、患者さんに共通するのは「見捨てられるのではないかという不安感」を持っていることです。 さらに、「自己像がわからない・自己意識がない」ため、常に気持ちが不安定です。 その不安定さが、浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、過食などの行動として表れます。 自殺の素振りや自傷行為もよく見られますが、これも表現できない気持ちを、自己を傷つけることで、かたちとして表しているのです。

また、BPDの抑えきれない感情は「短期間でおさまる」という特徴があり、2~3時間、長くても3日以上は続きません。 そして、怒りがおさまったあとには「やってしまった…」という空虚感が残り、自己嫌悪に陥ります。 さらに症状がひどくなると、統合失調症にも似た、妄想的な観念や意識障害、解離症状が起きてきます。

どのように境界性パーソナリティ障害(BPD)と診断されるのでしょうか?

以下に示すBPDに特徴的な症状に当てはまるかどうかを確認します。しかし、実際にそれだけではわからないことも多く、 何度か診ていくうちに「これは単なる抑うつとは違う」と、気付く場合もあります。

  • 現実または想像の中で、親しい人から見捨てられることを強く恐れ、不安を抱いて、なりふり構わない行動をする
  • 時に人を理想化し、時に人を酷評するなど、対人関係の変動が激しく、コミュニケーションが安定しない
  • 自分がどういう人間なのかわからない感覚を抱いている
  • 自分の苦しさをリストカットや自己を損なう行為(セックス、薬物、無謀な運転、過食など)に依存しやすくなる
  • 気分や感情が目まぐるしく変わる
  • ちょっとしたことでカッとなり感情が制御できない
  • いつも空虚な気持ちを抱いている
  • 強いストレスで現実的でない考えが出てきたり、現実感がなくなったりする

境界性パーソナリティ障害(BPD)と区別が難しい病気はありますか?

BPDには「慢性的に抑うつ状態が続き、時々怒りのようなものが湧いてくる」という特徴があります。 これは、うつ状態と躁状態が交互に表れる「双極性障害」と非常に似ているので、区別が大変難しいです。 しかし、BPDは双極性障害と異なり、「衝動的な感情が長続きしない」という特徴があります。 また、その他のパーソナリティ障害との鑑別も必要になります。

境界性パーソナリティ障害(BPD)ではないかと思ったら、どうすればよいですか?

BPDの患者さんは「職場でけんかになってしまう」「すぐにトラブルを起こしてしまう」などの理由で、 仕事を何度も変わるケースが多くみられます。ご自身で、仕事が続かないことに悩んでいる方や、 人間関係などで「生きづらさ」を感じている方は、一度専門医にご相談されることをおすすめします。

市ヶ谷ひもろぎクリニック理事長
渡部芳德先生

山梨医科大学医学部(現:山梨大学医学部)卒業。福島県立医科大学附属病院神経精神科に入局後、 米国デューク大学医学部神経科学研究センターに留学。てんかんモデルであるキンドリングを研究。 帰国後、博士号を取得し、精神科医療を専門に診療・研究を行う。現在は、医療法人社団慈泉会の理事長として、 南湖こころのクリニック、介護老人保健施設ひもろぎの園、市ヶ谷ひもろぎクリニック、精神科デイケアなどの運営にあたる。

〈資格・所属学会〉精神科医、医学博士・精神保健指定医・日本精神神経学会精神科専門医、東京有明医療大学客員教授、東京医科大学客員准教授、日本うつ病学会評議員

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